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第59回 ~石油化学が変わる!?新しいネーミングを考えよう!!の巻 (2014年2月07日)

何?このポスター。『石油化学』に代わる新しいネーミング?石油化学という名称を変えるということ?

そう!今、石油化学工業協会が募集しているんだけど、これに応募しよう思っているんだ。最優秀賞受賞者は30万円もらえるんだよ!

30万円!私も応募してみようかしら・・・。でも、どうして名称を変えることにしたの?

今や石油化学の原料は石油だけじゃなくなってきてるからね。これまでは主に石油、石炭、天然ガスを原料として使ってきたけど、今後はシェールガスが台頭してくるし、バイオマスや微細藻類、人工光合成など持続可能な資源の利用も進んでいる。石油化学という言葉ではもう、こうした新しいサプライチェーンの流れを表現できなくなってきているんだ。

確かにそうね。じゃあどんな名称がいいかしら?多様な資源を使う化学・・・

ちょっと待って、石油化学の名称を変えるには他にも理由があるんだよ。

えっ?他の理由?

石油化学はペットボトルや衣服、家電や自動車の部品など僕たちの暮らしの中で様々な製品として使われているけれど、今世界にあるたくさんの課題を解決したり、僕たちの暮らしをよりよくするために、技術革新によってより特殊で機能性の高い化学品が次々に登場しているんだよ。

へ~例えばどんなのがあるの?

わかりやすい例をあげると、新型旅客機ボーイング787に使われている部品かな。

このボーイング787の特徴の一つは機体の軽さなんだけど、これは一般の航空機の機体がジュラルミンやアルミでできているのとは違って、日本の東レが開発した『炭素繊維トレカ』が使われているんだ。

炭素繊維って、アクリル繊維やピッチ(石油、石炭、コールタールなどの複生成物)から作る化学繊維のことよね?確か軽くて強い素材なのよね。

そう。東レの『炭素繊維トレカ』はその性質をさらに強化して、鉄の4分の1の軽さで強度が10倍以上にもなっているんだ!機体の重量が軽くなった分、燃費も改善したから、ボーイング787は日本~欧州など長距離路線の運行が可能なんだよ。

へ~すごい!でもどうして企業はこうした高機能製品をつくり始めているの?

従来の汎用品だけでは企業が収益をあげるのは難しくなっているからさ。石油化学業界はこれまで世界的に設備の新設や増強を進めてきたことから、設備過剰になってきている製品もあるんだ。コスト面で競争力のある中東品の台頭やシェールガスのある米国品が今後さらに存在感を増してくることも要因の一つだ。そこで、独自の特殊な機能や品質を持つ高付加価値製品を作ることが、多くの石油化学企業にとって重要になっているんだよ。

石油化学で生き残るのは大変なのね。

そうだね。今や日本を含め世界の石油化学企業の多くがこうしたより収益性のある事業への選択と集中を行っているんだ。最近でいえば、世界的な総合化学メーカーであるダウ・ケミカルが昨年12月に、同社の歴史の中で最も長い塩素事業を売却・スピンオフ(分離・独立)していて、今後はより収益性が高く、安定的なリターンが期待できる製品・技術に注力していくという方針も打ち出している。企業としても、これまでの石油化学の枠にとらわれない事業展開が必要だと感じているんだね。

でも、そうやってみんなが汎用品を作るのをやめてしまうのも寂しいわね。

何もすべての企業が特別な性質や機能を持つ製品をつくるわけじゃないよ。汎用品でも、製造技術を向上させることによって付加価値のある製品をつくることを目指している企業もいるんだ。電化製品や絶縁体などに使われるポリプロピレンを製造する日本ポリプロは、世界で初めてメタロセン触媒という技術を使って透明性、柔軟性、耐熱性などがより高いポリプロピレンを作るのに成功しているよ。

そうなのね。資源だけじゃなく、製造技術や製品もどんどん進歩しているのね。じゃあ石油化学の新しい名称も、それらを踏まえて考えなくちゃいけないわけね。

そういうこと。で、いい案できた?

そうね。いいのが思いついたから応募してみようかしら。そしたらボーイング787に乗ってヨーロッパにでも旅行に行ってこようかな。

いいね~!それはもちろん、僕も連れて行ってくれるんだよね?

えっそうね・・・・いつかね・・・
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